初めまして京子さん。
馴れ馴れしくてごめんなさい。きょう仕事の前にあなたの出ていらした
番組を見ました。私の息子とそっくりのお顔をしたYuuki君の写真が画面に
出たとき、他人事のように思えずメールしたいと思いました。
私は子供を亡くした経験はもたず、水泳のコーチとして仕事をしています。
出会う方は、身体が半健康人の方が多く私自身も障害をもっています。
そんな中で、10年ほど前から、世の中の理不尽さに言い知れぬ不安と憤りを
感じ、自分なりに頭の中で整理整頓しようといろんな本を読み始めました。
 
早速インターネットで「リンチ殺人」と打ち込んだところ、京子さんあなたのホーム
ページの1件しかキャッチできませんでした。これだけリンチが横行しているのに・・
とまずそこに驚かされました。そして、あなたがやりきれない思いの中ホームページを
開かれた気持ちを強く受けとめました。
 
長々と書くつもりはありませんが、最近私は考えるのです。
世の中はおかしな方向に走っていっている。へんな話ですが、戦争中多くの母親
たちが息子を戦場に送り出す時、「この戦争は負ける」といった感のようなもの、
それと一致しているようにしか思えないのです。子供をもった母親だけが感じる
不安のようなものはまず当たっています。愛する子供たちが今後直面していくで
あろうことに無関心でいられるわけもなく、加害者を含め加害者を取り巻く人たちの
動向を見ても、何かが退廃していっているようにしか思えません。それは愛なのかなあ。
愛ってことばが言葉にすると軽んじられることを覚悟しながら、これまでも一生懸命
「大切なのは愛だ」って言いつづけてきました。リハビリをしている時の苦しさの中でも
前に進めたのは愛の力だったと思うのです。それは誰かに対してでもなく自分に対して
でした。この世の中に生をうけのんびり生活してきた私が、障害をもったその時は、
将来を悲観して自殺を考えたこともありました。
しかし、一度しかない人生をどのように生きていくかってことを考えた時、目先の人生の
ことより、生まれてきたことへの意味を深く考える機会となりました。
自分が納得しないことには絶対屈服しない、世の中の動きに反していても
あらがって生きる勇気をもつ、自分の発している感に敏感に反応できるような
知識をもつ、死をちゃんとみつめて生きる、といったようなことを決意したことを
覚えています。それから何年かが過ぎ、仕事にも復帰し、障害がある身であっても
心の健康の維持につとめていた結果、私と同じような考え方をする人がいっぱい
いることにも気がつきました。たぶんそんな感性がとらえたのが、あなたの番組だった
と思っています。たぶん偶然ではないのだと思うのです。
一般の人とは違った視点でみるようになった時、この世の中はおかしいって
強く強く思いました。
加害者の親はどうなってんだ、とか一緒になって社会に警鐘を鳴らしていきましょう、とか
いう気持ちでメールを書いていません。ほとんど京子さんの立場と同じところに自分を
置いてみています。私ならどうするだろう、私が京子さんならどうやって自分の気持ちに
決着をつけるだろう・・と。
この大きな社会の壁は誰が作ってきたのか、それは社会評論家にまかせることにして
私は誰がなんと言おうと、愛する子供をこのようなかたちで失うってことの心の苦しさを
今私にかかわっている人たちに伝えていきたいと思っています。とりあえずの行動が
そういうことです。それがどんなふうに変わってくるかは私にもわかりませんが、この先も
京子さんのページを開くことにより、いろんな意見を拝見しつつ、その時どきでの
感情に敏感に反応できる私でいたいと思っています。
相手も同じ人間であり何かの欠損により起きてきたこのような悲惨な事件が
強く強くひとの心に訴えかけることにより、社会全体が、いつ自分が加害者もしくは
被害者にになるやもしれない、ということを深く考えるきっかけにしたいと思っています。
そうでなければYuuki君の死が無駄になってしまうから。
 
かいさんでしたかしら。勝手に男性って感じてますが、彼の意見は彼がどのような
状況にいるのかわからない以上、返す言葉もないってかんじです。
正直彼らのような意見に悲しがってる暇はないと思うのです。もろもろの社会的な
事情により、誰しもが持って生まれてきたであろう「愛」をどこかに置き忘れてきた
ようにしかみえない人に時間を割いてる場合ではないと考えています。それは
かいさん自身が今後の人生でいつか知るときが来ると信じているし。
京子さんが亡くなった息子さんの心に触れることが出来た時、たぶん、
どこで亡くなり、どんな風にして死んでいかなければならなかったのかという今一番
知りたいことも、枝葉のことであって、Yuuki君がそれを母が知ってまた悲しみや
悔しさの涙に暮れるのを彼は喜ばないのではないかと、ふと思っています。
 
これも偶然のように今読んでいた本に、折しも子供を亡くした人へのメッセージが
書いてありました。
「生きがいの創造」という本です。精神世界オタクのように思われてしまうと困るので
誰にでも薦めようとは思わないのですが、何か心の中で、ふむふむと、すべてが
解決されていくような感動を味わいました。たぶん、京子さんも読まれると理解できる
のではないかと思うのです。
 
心のままにいきなりメールをしてしまいました。これも何かの縁だと思います。
このために、私は苦労してパソコンを勉強したんだと思えるほどです。
あらゆることが偶然ではない、という言葉が好きで、障害をもったことを今では
幸せに感じることができるようになりました。
苦しいお気持ちの中で、このようなノー天気なメールをお読みになったら
京子さんはかえってご自分の運命を苦しく感じられるのかもしれませんが、
その本を含めいろんな科学の本を読んでもなお、亡くなった方があの世では
苦しみも悲しみもなく幸せに暮らしているんだということ、そして生まれ変わって
きっと京子さんの身近な人として現れるのではないかというアホな感覚にとらわれていて、
それを伝えたいと強く思いました。
宗教じみていて言うのもはばかられるのですが、科学も倫理も今では境目が
なくなってきました。
それをお伝えしてメールを終えたいと思います。
 
これを書きながらタバコなんか吸っちゃっているんですけど、心身が健康でないと
亡くなった方からのサインを見落とすぞという言葉が妙に心に残っていて、
時としてやけになる時は戒めの言葉として肝に銘じています。
どうかお身体を大切になさってください。そばでYuuki君がきっと見守っていて
くれるはずですから。あなたが彼にそそいだ愛情は決して無駄にはなって
いないはずですから。
障害をもったり大切な人を亡くしたりの経験を経ても尚、私は愛を信じたい
と強く思っています。
お会いしたことのないあなたに今感じているのも、同じ人間としての愛であろう
かと思います。
                   ケイ
PS.ニックネームをケイとして、またお便りいたします。
   もしも、京子さんの視点でメールをお読みになり、少しも癒されないようで
   あったなら、どうかこのメールは、削除でツルンって消してください。
   くれぐれもお身体大切に。
   いつかプールでお会いすることができたら、身体の健康と同じように大切な
   心の健康についていろんなお話ができるかなと思います。
   そうそう、水の中で夢中になって潜っていたとき、亡くなった方が見えたような
   気がするっておっしゃった生徒さんがいました。私は誰もがバカにしていた
   その出来事も、「きっとそれは本当だ。」って感じました。