飯島さま
 
わたしは独身で、子供をもったことはありません。ただ、理不尽な暴力により愛する人を奪われたご家族の胸のうちはいかばかりであろうかと、心を痛めるしだいであります。
 
ところで、最近おもったことがありメール差しあげます。
 
1ヶ月前から中学2年生の男子の家庭教師をはじめました。学校の成績は最低クラス、日本語さえまともにできない子ですが、得意なものがひとつだけあります。それはファミコンのゲームです。
 
わたしも彼とのコミュ二ケーションをふかめるたすけになればと、ゲームをみせてもらいました。そのゲームというのは、格闘のゲームで、相手をなぐる、ける、なげとばす、というものでした。ゲームのなかでは、登場するキャラクターは、なぐられても、けられても、なげとばされても、何ごともなかったかのように立ち上がり、また格闘をつづけています。
 
わたしはそれをみてかんがえてしまいました。実際に体に痛みをうけたこともなしにこのようなゲームをやっていたら、暴力というものにたいする感覚が麻痺してしまうのではないかと。
 
最近では、わたしの住んでいる場所のちかくで少年たちがホームレスの男性に執拗な暴行をくわえて死亡させるという事件がありました。こういった事件がおこると、少年たちは「まさか死ぬとはおもわなかった」というそうです。わたしには、それがたんなる言いのがれではないような気がしてきたのです。もしも、暴力的なゲームばかりやっていたら、そんなふうに(いくらやっつけても相手は死なないと)おもってしまうのではないかと。
 
暴力的なゲームと少年の凶悪犯罪の因果関係についての実証的な研究というものをきいたわけではありません。しかし、これも最近、何ヶ月か女性を監禁した犯人の部屋からは、エロゲー(性的奴隷として女性を調教するというアニメゲーム)のソフトがみつかったそうです。
 
疑ってみるにたりるのではないでしょうか。
 
わたしもそのうち機会をみて、家庭教師先の子供とその親にゲームがおよぼすかもしれない悪影響について話してみようかとおもいます。
 
テツオ