飯島 京子様
 お嬢様、留学お決まりとのことおめでとうございます。お母様がよく決心なさったと思います。でも、大きく羽ばたかれることおよろこび申し上げます。京子さんもこれを機に、できるだけ日本での時間を絶って、大陸の空気に浸る機会をもたれれば、と思います。この闘いはあまりにも長く、際限がありませんから。
 
 昨日、岩波ホールで、「平塚らいてうの生涯」を観て、紀伊国屋で犯罪被害者の会の「話を聞いてください」を買ってきました。飯島さんのところは、一番先に読みました。HPの記事の重さに重なってしまって、新たな感想はありませんが、よくまとめられていると思いました。
 
 新しく「御意見」に投書される方が、過去の投書を全部読まれることは、今ではとても無理なことですので、育て方についての御意見が何度も繰り返されますが、心ないと言うより一つの立場かと思います。これが御意見の現実だとも思います。
 
 「話を聞いてください」(サンマーク出版)のなかで、飯島さんは、御意見欄の批判と同じ反省をしっかり書かれています。飯島さんの育児に御意見をされる皆さんに「話を聞いてください」を買って読んでいただきたいと思います。
 
 飯島さんは、反省せざるを得ない立場なのかも知れませんが、私は、加害者と育ち方とは大いに関係があっても、この事件の被害者と育て方とは関係ないように思います。この環境の悪さを野放しにしておけば、子供を箱入りにして育てることのほうがよほど危険だとさえ思えます。この事件は、たまたま友樹君の上に降りかかってきてしまったけれど、どのような育ち方をした人の上に起きてもおかしくありません。「話を聞いてください」の他の事件と読み比べても言えることです。時間は何時であれ、かれらは鎮まることなく、しっかりした大人の介入がなければ、場所を変えて実行したようにも思えます。
 
 飯島さんの育て方が悪ければ、私などは最悪でした。一人親で、私は夜の仕事で帰宅が午前様でしたから。自立の教育の建前として、門限など決めませんでしたし、決めたとしても、何の監督もできませんでしたでしょう。友達との付き合いも、決して人を差別しないことを建前に育てましたから、子供たちには、さまざまな友人がいたと思います。友達に、悪いことは悪いと言える子供は、大人に厳しく言い含められたからと言って、なかなか育ちません。自分で人間関係を読み取りながら考え、相手の立場も思い、間違いながら対応を身につけていくものだと思います。友樹君はその途中だったのだと思います。
 
 子供たちが友樹君のような事件に巻き込まれずに思春期を過ぎてきたのは、単なる幸運に過ぎないと思います。さらに、大人の言うままに、何も間違わないで育つ子がいたら、そのほうが脆弱なのだとも言えるでしょう。        飯田啓子