法曹を目指すあなたには「釈迦に説法」かも知れませんが、いくつか気になった点がありました。

> 先日「少年法」が改正され「父性」が復権しましたが、これでは少年法の基本精神とされてきた「刑罰ではなく保護更生」に反してるんじゃないか

 上記の御意見は、「原則逆送」「凶悪事犯の検察官関与」を指したものでしょう。
 ・・・法の、それも刑罰に関わる法の存在意義とは何でしょう? なるほど、保護更生の理念も含まれるのでしょう。しかし、それのみを突出させた少年法の運用は、著しい、犯罪被害者軽視という現実を産み出しました。被害者や御遺族は、刑事手続きの場から閉め出され、証拠以下の価値しか認められず、犯罪の実体や加害者の処遇・現状を知ることもできませんでした。従来の家裁判事1人による審理で「和やかな雰囲気」では、教育的配慮に偏るあまり、正確な事実認定に影響を来してきたのも事実です。・・・知人に家裁調査官だった者がいるのですが、レイプを繰り返した18歳の少年が審判の席で言い放ったそうです。

「オレは少年なんだから、刑務所に入らないで済むように配慮して」

 私は、彼の言い分のみを認めるのは「間違った愛」にしか思えません。
 改正前少年法のファジーな手続きは、被害者・遺族を閉め出してきたばかりではなく、冤罪の可能性も指摘されてきました。改正少年法が十分ではないでしょうが、刑事手続きの厳密化、被害者の知る権利の確保は、決して被告・加害者の不利益にはならないはずです。
・・・さて、加害者は現状回復義務や懲罰・賠償も負うべきでしょうが、飯島さんがどのような和解を勧告されたか御存知でしょうか? そして、加害者全体が、どれだけ賠償を履行してるか、御存知でしょうか? 白書によると、2割未満で、自己破産を試みる不心得者(と断じて良いかと)も後を絶たないようです。少年法に限らず、法とは、加害者の保護更生のみのためにあるわけでないと思うのですが。

> 非行少年と呼ばれるほとんどの人が、子供のころに親や先生(大人)からなんらかのいやがらせ(いわゆる虐待)をうけていたことがわかりました。では、なぜそれが非行に走るのかというと、本気で怒ってくれる人がいないから・自分の気持ちを「聞いて」くれるひとがいないからです。このことにより少年は「ストレス」がたまり、大人から息抜きの場を奪われ(クラブなど。未成年が入れないのは当たり前ですが、大人だって子供の時にダメっていわれてもいっていたはず。)ストレス発散行為を行ったら「犯罪者」のレッテルを貼られるということです。 

 なるほど、そういう一面もあるでしょう。子供は親だけで育てられるわけではないし、起こった犯罪が世相を反映するのも本当のことでしょう。
 ・・・では、そういう不遇にある少年達が、全て凶悪犯罪に走るのか? という点も考慮すべきだと思います。
 私は、あなたより20年ほど長く生きてきましたが、今の高校生達ほど自由ではありませんでした。楽器店でギターに触れただけで「不良扱い」で、学生服のボタンを外したら学校に通報されました。年齢をごまかしてディスコ(今のクラブとは若干違いますが)に入ろうとすると、「ガキの分際で10年早い!」とたたき出されました。形式的にはものすごく抑圧されてましたが、怒ってくれたり、注意してくれる大人がいた分、「幸せな時代」だったのかも知れませんね。だからこそ、考えてほしいのです。

 クラブや酒場に出入りできることが、「自由」なのでしょうか?
 喫煙やセックスを経験すれば、「大人」なのでしょうか?
 
「人間は平等なんだから、先生とか目上の言うことなんて聞く必要がない」
「弱い者イジメもカツアゲも、オレの個性の一部だ。犯罪者なんて言われる筋合いはない」
・・・やはり少年審判で、加害少年達が言い放った言葉です。
 戦後教育を全て否定するつもりはないですが、「自由 = 自分勝手」という勘違いをしてしまった責任は、我々大人が全て負わなければならないのでしょう。
  平等とは全ての人を同様に扱うことではないし、責任を負えない者に自由を享受できるはずがないのです!
 このことを家庭も教育現場も世の中も子供に訴えてこなかったツケが、いろいろな形で出ていて、きっと凶悪な少年犯罪もその一部に過ぎないのでしょう。その意味では、少年犯罪を全て「少年法と、その運用」に帰結させるのはムリがあります。

 私は、あなたとはあまりにも違う意見を持っています。中学生以降は刑事罰の対象とすべきだし、人殺しは一生人殺しとして扱われるべきと考えます。ここは議論の場ではないので、このことであなたと論争するつもりはありません。あなたが飯島さんに最低限の配慮を見せている限り、排除・攻撃するつもりもありません。
 しかし御意見を述べるからには、飯島さんのお立場や、御自身と違う意見があることも承知されておくべきではないでしょうか? 
 
 友樹さんが亡くなってる以上、加害少年達は、どのように現状回復義務を果たし、何をもって更生とすべきなのでしょうか? 彼らが、自分の犯した罪を正面から受け止められるようになったとして、「それでも生きていたい」と思うでしょうか?

 大学に入学されたら、是非、犯罪被害者の集会・シンポジウムに参加されることをお奨めします。法的にも経済的にも酷い立場に追いやられ、加害者の周辺から嫌がらせを受けてきた人もいるのです。どうか、それらのことも知ってください。
 加害少年に痛みがあるように、犯罪を強いられた側にも痛みがあるのです。あなたの「非行少年だけが悪いのではない」という言葉が、犯罪被害者をないがしろにするものではないと、私は思いたいです。両者に思いを致すことができる「良き選良」となられることを、心より祈念いたします。

                zucchini