いつも自作の詩を送ってくれている友人が、今回、朝日新聞 opinion−news project (1月7日付)の、坂本龍一さんとの対論、「暴力の前に言葉、音楽は無力か」で語られていた、詩人、長田弘さんの言葉を抜粋して送ってきました。坂本龍一さんが、「そのお話はとても示唆的です。AかBかという原理主義、排中律に陥らない。」と応じていますが、私も非常に感ずるところがありましたので、読まれた方も多いかと思いますが、孫引きでお送りします。
 
 それは、9月11日の事件後に語られた、作家、エリ・ヴィーゼルの言葉、
 「1丁の機関銃を持ったテロリストは100人の詩人や哲学者より強い」に対する、
長田弘さんの応答で、次のような内容です。
 
 <ヴィーゼルの言葉は反語だと思う。なぜなら機関銃は、殺せても蘇らせる力を持たず、言葉はつねに蘇る力、蘇らせる力を持ちつづけるから。私は、複数によってかたちづくられていくのが本来のアイデンティティーなのだと考えたい。21世紀のアイデンティティーにとって最も重要なのは純粋な一つのものではなくて、混在と複合という、プルーラル
(他者のいる)アイデンティティーの持ち方だと思う。>
 
                                        飯田 啓子