まず始めに言いますと、トラさんの主張は机上では成立します。なるほど統計という数値化のみで物事を判断すればこのような解釈プロセスは論理的に可能である。嘘はまったくみあたらない。トラさんの真摯な文章からしますとデータの出所も確かな事でしょう。机上の世界では論理的に正しい。表面上は正しい。以上の事は認めます。
しかし世の中の常識、数値化できない物事、人間の心理、多角的な考察、そして数値でなく現実判断などを導入しますと、トラさんの論理はあまりにも単純過ぎると思うのです。
例を出してみましょう。
*たとえばある数年間に公害が増えたとします。こりゃいかんという事でその間環境規制がいろいろと成立し罰則も強化された。しかしそれでも高度経済成長の暴走は止まらず統計で公害はもっと増えた。*
このような場合ってありえますよね。トラさんの論理ですと答えは以下のとうりになります。
*罰則強化にもかかわらず公害は増えた。よって罰則強化に公害抑止効果は無かった。だから罰則強化はする必要なかった。*
数値を過大に重要視するとこんな珍解釈になってしまう。しかし常識からいって以上のような短絡的な解釈をする人はまずいないでしょう。もっと奥を見るでしょう。普通の人はそりゃ当然罰則強化も公害防止に役立っていると考えるに決まってるじゃない。しかしまだまだ罰則が甘いのではないか、予防措置が甘いのではないか、とにかく公害勢力があまりにも莫大でこの程度の法律じゃ手におえないのではないか、などなどまあ、いろいろとカンカンガクガクするわけです。しかし繰り返しなりますが罰則強化でも手におえなかったと解釈する人は多いですが、罰則強化それ自体に抑止効果が無いって解釈するひとはまずいないでしょう。またそれを証明せよと迫る人もいないでしょう。だって罰則強化によって抑止された公害って数値化しようたって無理じゃない!世の中数値化できないものって沢山ありますよね。そもそもそんなやりとり自体笑われるのがオチ。
も一つ例
*(私)駐在員さんは先月30時間の残業をした。しかし売上グラフは先月落ち込んでしまった。よって残業という行為に売上向上効果は無い。今後一切残業してはいけない。
こんなふうに会社からいわれたらたまったもんじゃありません。トラさん式論理で数字だけ見リャそうなってしまいます。ただ私は、これだけ残業して汗水流したのだから何とかこの落ち込みで済んだんです、景気が悪いんだからしょうがないじゃないですか、じゃあ何ですか、残業って金食い虫であって、いい面は全く無いんですね、ああ、いいですよ、どんなに注文増えても金輪際残業なんてしませんよー、と言うでしょう(実際はそんな勇気無い)。でも私は証明できません。
ですから数字だけ見たってだめなんです。
 
nyan2さんがおっしゃるとおり常識から考えたって「厳罰化に抑止効果がない」なんて珍解釈ありえないでしょう。ホンとに子供でもわかること。シートベルトしかり。アメリカの場合は厳罰化でも手におえないほどワルガキが増えちゃったんでしょう。もしかしたら厳罰化が不充分だったんじゃないですか?大暴力には厳しくなっても、小暴力の段階では厳しくなかったんじゃないですか?厳罰化してなかったらもっと犯罪は増えてたんじゃないですか?まあいろいろ見方ができるわけです。厳罰化によって犯罪を思いとどまった人の数なんて数値化できません。再犯を繰り返す者も刑務所に入っている間は犯罪は犯せません。シャバに出たら再犯できます。刑期が2年増えれば2年間再犯を抑止できます。しかしこの事実も数値化できません。
つまり統計で私の主張を証明なんかできません。残念ながらできません。ただそれって当たり前の事だと思うんですけど。そもそも何の社会問題でもそうですが、罰則強化されるときって既に収支がつかないほどその問題が爆発的に増えているときであるから、そりゃ当然その程度の罰則強化じゃ不充分な場合もあるし、もはや手遅れって場合もあるでしょう。抑止力をはるかに上回るほどじゃんじゃんと問題が生まれることもあるでしょう。
ですから統計に溺れちゃだめなんです。統計だけ見リャ戦後少年犯罪は減ってきてるのだから(私はその統計を信用しないが、それは別として)例えばオヤジ狩りなんて何の対策も必要ないとなってしまう。しかしどう考えたって以前はオヤジ狩りなんて少なくて、ここ数年激増したじゃない。大雑把な統計に反映されない事なんていくらでもあるんです。
そういうわけで統計に溺れないでください。そんなもんひとつの参考にすりゃいいだけ。大切なのは本質を見極める確かな自分自身の目だ。
駐在員