こんばんわ、祐樹です。今日は少年犯罪の事について調べました。この記事が善い悪いじゃなく、このように考えている人がいると言う事で読んでください。
 
 佐賀で起きたバスジャック事件を先取りした「ユリイカ」と言う映画は今年のカンヌ国際映画祭のコンペティションで賞を、さらに批評家賞も取り、話題になりました。批評家賞はロビー活動では取れないので極めて重大な事ですが、注目すべき事はまだあって、この映画が五月に佐賀で起きたバスジャック事件を先取りしている点です。
 この映画では、バスジャックがモチーフとなり、まるで犯人である少年の目から撮ったとでも思える内容です。この映画がすごいのは、少年犯罪に対して倫理を示しているところです。
 まず映画の構成を言うと、バスジャック事件があり、運転手と中学生の兄妹の三人だけが生き残ります。ところが、三人ともその事件がきっかけで脱社会化、つまり「人と物の区別がつかなくなって」しまいます。さらにこの兄妹には二十歳のいとこがいるのですが、彼もかつて眼前で人が殺されまくるという経験をし、すでに脱社会化している。この四人が映画の登場人物です。
 そしてこの映画は二つの事を提示しています。一つは、「人と物の区別がつかない」ような連中がたくさん出てきつつある事について、誰が責任を負っているのかという事です。
 今、巷では少年法の改正、厳罰化といった、罪を犯した少年自身に責任を取らせろという議論が盛んです。しかし、厳罰化をするためには責任という概念をよく考えなければいけません。近代的な責任の概念というのは、選択肢が存在し、それが選べるという状況においてはじめて責任を問えます。アメリカやイギリスなどでは、「子供たちに選択肢を与える」という大人の責任を果たし、その上で「それを選んだ事の責任は子供たちに取ってもらおう」という整合的なロジックで厳罰化を行なっています。しかし、日本の青少年行政や教育行政は、子供たちに十分な選択肢を提示し、それを選ぶ能力を与えるという事を推奨してきていない、むしろ制圧してきたにも関わらず、厳罰化が言われています。
 青山監督の『ユリイカ』では、「この人間たちが脱社会化してしまうには、当人たちが選べないある条件に負っている」とはっきり示している。そして、その条件とは何なのかということを僕たちに考えさせる力があります。僕がよく言ってることですが、「人と物の区別がつかなくなってしまう」背景には、「他者との社会的な交流を経由して自己形成を遂げる」という回路が遮断されてしまっている現状、「他者と無関連な場所に尊厳を打ち立てることができる」状況があります。
 さらにその背景には、たかだか少し勉強ができる程度でプライドが温存できるような学校化があるでしょう。また、僕は「コンビニ化情報化」と呼んでいますが、他者との社会的な交流が、一切存在せずとも生活できるような環境があります。現在は、Eメールと宅配があれば、コンビニにさえ行く必要がないですよね。この状態からもう後戻りはできないでしょう。
 となれば、そうしたコンビニ化情報化に抗して、他者との社会的な交流がないと自己形成が遂げられないような社会環境を用意しなければダメで、学校化を徹底的に解除して、別のプログラムに子供たちを組み込んでいくことが絶対的に必要なわけです。
 そういうことをする責任は大人たちにある。責任を果たさずして、その結果、生じた犯罪に対して本来論理的には問えないはずの責任を子供たちに問うという社会の動きは、本末転倒もはなはだしいと言っていいでしょう。
 もう一つ、青山監督の映画が提示しているのはこういう点です。脱社会的な人間を出さないための社会環境を整備する責任は僕ら大人にある。しかし、今すでに多くの連中が脱社会化している。そのすでに存在する連中にいかにして人を殺さないでいてもらうか。その責任が我々にあるとして、どうすればいいかを問いかけているんです。この映画の中では一つの回答例が示されています。役者広司演じるバスの運転手が、人を殺しまくっている兄を止めようとして「人を殺しちゃいけない理由なんかはない。が、おまえがそうすることで、おまえにとって大事な人間が死ぬことになるんだ」と言います。大事な人間というのは妹であり、運転手自身なのですが。
 つまりこういうことです。脱社会的な人間に最低ひとり重要な人間を作る必要がある。しかし、それが妹のように存在すればいいが、いなければ命をかけてその人間にとって大事な人間になろうとしなければならず、そのうえでそいつが人を殺せば俺が死ぬという構造を作るしかないと。命がけのコミュニケーションだというのです。
 これは現実には不可能な回答例かもしれない。むしろ、少年院に入れて隔離するのが精一杯でしょう。でも、その回答例の現実性ということは別問題として、隠蔽されがちな責任の所在をはっきりさせているという意味で非常に重要な映画だと思います。
 
 字がごちゃごちゃして読みにくくなってすみませんそれじゃおやすみなさい。☆この記事はもう1部ありますがそれはこの次に打ちます。