飯田啓子様

貴方様の「子供を亡くした親」としてのご感想やご心境について、私には大変参考に
なり、教えられることが多く、自死と事故死と殺人と違いは厳然とありますが、敬意
を表してきました。

ここで、私の本音や反論を書くと、また、「被害者意識だけを錦の御旗のように大上
段に振りかざし、幅広い考えを排除しようとされている」と叱責を受けること必定で
すので、書けないのが残念です。貴方様の言葉を借りて申し上げると、私が「強者」
の論理と「被害者の論理」を「錦の御旗のように大上段に振りかざし」ているように、
貴方様は弱者の論理と子供へ慈愛を「錦の御旗のように大上段に振りかざし」ておら
れる。純粋で善意があれば、それは全てのものに優先すると仰っているように受け取
れます。「純粋」で「善意」であれば、幼稚で浅薄であっても、それが人を傷つける
としても、何をしても、何を言っても許される、許さなければいけないという立場で
しょう。そういう美辞麗句を「錦の御旗のように大上段に振りかざされる」と、反論
をすると「守るべき少年の心を、自殺を呼ぶいじめのように大きく傷つけて」しまう
と仰られると、何も言えなくなります。貴方様のように子供を教えている、沢山の若
者と友人であるという、ご自分の経験を前面に押し出して、恰も日本の若者の気持ち
は全て分かっているというような仰り方は、とても不遜な気がします。貴方様らしく
ない。「幅広い考えを排除しよう」としているように受け取れます。私は「幅広い考
えを排除しよう」としてはいません。勉強不足だと申し上げているのです。さちさん
やnamiさんについての貴方様の御意見に具体的な反論はしません。困りました。
反論すると子供の心を傷つけると非難される。本当に後悔しています。私を名指しで
書いてあったから、口を出しましたが、バカなことをしました。死んでやると切り札
を出されたら、何も言えませんから。あのお二人のことで私を非難されるなら、私宛
に直接メール下さい。私が反論できないことを承知で、人を見下して悪し様に非難し
訓辞をお書きになるのは、フェアじゃありません。もうこの場ではこれだけにしたい。
私の言いたいことは殆ど書けない。貴方様の仰っていることは承知で意図を持って書
いています。美辞麗句を書くことは容易ですが、それは子供を増長させ、考えぬ子供
をつくることで、子供の真の成長を助けることにはならないと思っています。貴方様
は実践なさっているから、説得力がありますから、それはそれで尊重していますが、
いささか「大上段に振りかざし」過ぎていると感じました。貴方様が関わっている子
供が日本の全ての子供を代表している訳ではないでしょう。

私にも死んだ信介と次男がおります。息子や彼らの友人を通して、子供の心も多少は
分かっているつもりです。彼らは、少なくとも、自分がまだ物事を良く知らないと言
うことは自覚しています。だから、本を読んだり、勉強しています。少しでも理解す
るために。友人達は聡明な子供達です。ですから、プライドがあるから、分からぬ世
界に公に不用意に未熟な意見は述べません。私は息子を大人として扱ってきました。
大人だから、自分のすることには責任を持てと。私は甘やかされ過ぎている子供が多
すぎると常日頃感じています。信介とは随分議論をしました。未熟な考えには徹底し
てこてんぱんにやっつけました。そうすることであいつを正面から受け止め、鍛えた
つもりです。父親を乗り越えることが大人への第一歩です。死んでしまったから、結
果を見せられませんが。

私や日本の父親は強者の論理で生きてきていると一括りにされれば、漠然としてです
が、そうかも知れません。貴方様と違い、競争と無縁の社会では生きていませんから。
貴方様が「純粋」と「善意」を前面に押し出しての弱者の論理を「錦の御旗のように
大上段に振りかざす」ことは、何か教条的で一面的なものの見方をされているように
感じます。とにかく子供を守ると言う立場で仰るなら、理解できますが。

私は息子を強者、勝者になるように願って育ててきました。同時に、弱者や敗者への
思いやりを育てることもしてきました。苛酷な競争社会で、息子を弱者や敗者にはし
たくなかった。何を目標にしたって良いが、強者や勝者になるには人一倍努力が必要
です。夢と目標を持って、努力しろと。私は努力をしない人間は評価しません。どん
なに優秀でも、努力しない、考えぬ人間は進歩しません。能力は劣っていても、努力
する人間は少しずつでも前へ進みます。どう成長するか、楽しみがあります。逆に能
力は優れていても、努力しない人間は楽しみがありません。前へ進むことはないから
です。そんな人間は結局、脱落して行きます。

貴方様の慈愛に満ちた心境と一人でも多くの子供の心の悩みを解決してやろうという
姿勢と実践は大変尊敬に値するものだと思っています。私は子供の全てを受け入れる
慈愛に満ちた心境には生涯なれぬし、それを望んでもいません。そう書いたのは反語
でもあります。若いから、未熟だから、と全てを許し過ぎているから、甘ったれた子
供や大人が多くなっていると思います。私は子供の心の悩みは教育制度、学校制度を
変えなければ、解決しないと思っています。殆どの悩みが学校から発生してきていま
す。勉強が出来て校則を守り教師の云う事を聞く子供を作ろうとする画一的な管理教
育と勉強不足能力不足で努力もしない教師が多いから、子供は一人一人違うのに平等
や公平を錦の御旗に型にはめようとする、個性を認めない、自由を認めない、教師に
も自由を与えない公教育制度が、いじめを中心とする子供の悩みを創生していると思っ
ています。勉強が出来なくたって、スポーツが出来なくたって、他人にはない良いと
ころが必ずある筈です。それを評価し、認めてやることが出来ない、しない制度だか
ら。

私は信介には「人には欠点はある?お前にもあるだろう。だから、欠点は欠点として
認めて受け入れ、目をつぶれ。お前には無い良いところだけを評価して、付き合え。
そうしなければ、友達は出来ない。」と幼い頃より言い聞かせてきました。「お前の
尊厳を傷つけられるようなことがあったら、お前の大事にしているもの、生き方や友
達を傷つけられたら、それを守るためには、徹底して戦え」とも。私の生き方でもあ
り、子育て方でもあります。

具体的な反論は出来ないから、一般論として書きました。

少年法についても一言、申し上げます。私の立場は少年法廃止です。大人も子供も同
じ扱いで十分だと思っています。子供が大人と対等だと思っているのなら、責任も同
じに取らねば筋が通りません。現代はそれが必要な時代だと思っています。加害者少
年の更生を第一義とする人達は、我が子が通り魔のように、何の非も無いのに、ある
いは金目あてで殺された時に、それでも、加害者は少年だから、更正して行くことが
大事だから、我が子が殺されたことは仕方ないと、殺された我が子よりも加害者の少
年が大切だと、加害者少年の人権を第一義に考えることが出来ますか。あるいは、右
の頬を打たば左をも差し出せと、自分の命まで差し出しますか。これが原点だと思い
ます。自分の身に降りかかった時には、どうだろうと考えなければ、単なる「えせ」
人権主義で、話になりません。そうなった時に、主張通り行動されるなら、評価でき
ますが。ですから、貴方様にも、お伺いしたいと思います。息子さんが少年に通り魔
やリンチのように理不尽に残忍に殺害された時にも、やはり少年の更生が一番ですか。
それで、残された家族、妻や子供にも、少年の更正や将来の幸せを認めろと説得され
るのでしょうか。加害者を憎むことはしませんか。加害者が1,2年で解放され、
「更正」されたとされる現実を見ても、悔しくも理不尽だとも感じませんか。息子さ
んは心の闇の犠牲になったのだ、運命だと達観されますか。ご自分の命も更に心の闇
に提供されますか。そのように実践されたら、私は、薄っぺらな人権主義ではないと
評価します。

貴方様の博愛主義は実践を伴っておられるようなので、高く評価していますが、それ
を人に押しつけるのは如何なものでしょう。BBSや「御意見」欄は広く意見を求め
ているのだから、様々な意見があり、人生や体験に基づいた立派な意見なのだから、
被害者意識を大上段に振りかざして、当事者でもないものが当事者の威を借りて、排
除するのはおかしいと仰っておられますが、真理の追究にもならぬとも。貴方様の人
を見下した仰り方は我慢なりません。恰もご自分の生徒に訓示を垂れるような、実践
されていることとは異なり、薄っぺらな正義感と写ります。加害者の心の闇を理解し、
加害者を許すことが、貴方様の究極の善なのでしょうが、それを被害者に求めて押し
つけて、苦しめることが貴方様の思いやりですか。貴方様は発言者を擁護することに
躍起になって、結果として、BBSを閉鎖に追い込み、多分この「御意見」欄もいず
れ閉鎖に追い込まれるでしょう。私は確信しています。貴方様は我が子を亡くしては
いるけれど、他人に殺害された訳ではないから、ご自分の体験とそれを克服した自信
から、大変軽く考えておられる。貴方様のお嬢様を失った悲しみの言葉には心を打た
れましたが、私の今後の心の持ち方にも参考になりますが、自死と殺人とは決定的に
違います。私の息子も世間では事故でしょうが、私は安全軽視による人為的な不作為
の殺人だと、殺害されたと思っております。自ら死を望んだのではなく、他人に殺害
されたのですから。ですから、私は飯島さんの気持ちが良く分かります。怒りと悔し
さと憎しみが。飯島さんも「私の気持ちを代弁してくれた」と日記で書いておられま
す。貴方様はご自分の慈愛に満ちた気持ちを人に押しつけています。貴方様ほどの人
がどうして、そうなさるのか、この点は理解できません。飯島さんが加害者を呼んで
話を聞いたことを、加害者を許し更正させる温かい第一歩を踏み出したような、信じ
られぬ見当はずれの見方をされる。BBSを続けたことも、悲しみを克服される第一
歩のように見当はずれをされる。どうして、そんな、薄っぺらな考え方をされるのか、
少女趣味の安っぽい正義感に支配されているのですか。このHPはあくまでも子供を
殺害された被害者のHPで、公共のHPではないのです。その被害者に配慮しないで、
被害者意識だと大上段に非難して、様々な意見があるのだから、それを求めたのだか
ら、我慢しろと言うのは思慮深い貴方様とも思えません。人が皆、貴方様のように寛
容で慈悲深い訳ではありません。一人の息子を殺されたら、もう一人の息子も差し出
せと言うようなものです。この「御意見」欄も、続けることはいずれ限界に来ます。
発言者の何気ない配慮のない一言一言で、心がずたずたになります。目に見えるよう
です。飯島さんは、私と、ある意味、全く同じ境遇だから、こんな事を続けても傷つ
くだけで意味がないと、思われることになると思います。良く分かります。貴方様の
ように被害者を傷つけてずたずたにしても当然だと、それは被害者意識の振りかざし
だと、堂々と仰る方がおられる限り。美辞麗句を並べて、失意のどん底の弱者の心を
理解しない方がおられる限り。

悲しみを刃などにはしてません。どうして、見当はずれの見方をされるのですか。純
粋なら、善意なら、人を傷つけても構わないと言う論理には組みしません。貴方様は
よく分かっている筈です。薄っぺらな正義感や善意で傷つく人が多いことは。傷つけ
る意思がないのなら、「被害者の心理」をもっと勉強しろと言っているだけです。

悲しみは年々静かに深まるばかりというお言葉は、辛いですが、ありがとうございま
す。心して、今後の人生を生きて行こうと思います。貴方様とは異なりますが、私に
出来る、後進の子供達への最大限の応援を目標にして。


横浜市 富久邦彦拝