ある夜、自宅の庭に出てみると、見知らぬ少年がガレージのバイクの
ところにいる。鍵を回してエンジンを掛けようとしている様だ。しまった!
鍵を刺したままにしておいたのだった。私は、バイクを盗まれないように、
両手で少年に掴みかかる。すると、少年は私の右手に噛みついた。痛い!
少年から離れる。すると、少年はズボンのポケットに手を入れ、何か光る
金属片を取り出した。ナイフだ!私の右手は少年に噛まれて血が出ている。
このままでは、命まで奪われてしまう!恐怖に駆られた私は少年の腹を思い
きり蹴り上げた。すると少年は仰向けに倒れ、頭をガレージのコンクリート
の床に打ちつけ、そのまま動かなくなった。
 救急車を呼んだ。しかし、少年は膵臓破裂を起こしており、死亡した。
少年がポケットから取り出した金属片は自動車の鍵だった。私のものでないが、
盗品である。ナイフではなかった。彼がなぜ自動車の鍵を取り出したのか、
死んでしまった今となってはわからない。

以上は事実でなく、フィクションです。吉藤さんの「私が取り押さえた
暴走族の少年、謝罪すらせず、逆に慰謝料請求だとさわぐ家族、こいつらは、
法が許せばいつでも殺したい」という御意見について考えるために、私が
創作しました。

さて、上記フィクションのようなことが実際にあったとしても、「私」は、
正当防衛が認められ、罰せられることはありません。
盗犯等の防止及処分に関する法律(以下、盗犯防止法と略す)という
法律があります。盗犯防止法によると、

1)防衛者が盗犯を防止するため、あるいは盗品を取り返す場合
2)防衛者が1)の現場において現在の危険を排除するため、あるいは興奮
して危険があると思いこんでいる場合

のニ条件を満たすと、防衛者が盗犯を殺しても正当防衛になります。
盗品の値段は関係ありません。日本の法律は場合によっては盗犯を殺し
ても良いとしています。さらに民法720条により、正当防衛が認められた
場合、損害賠償の責任はありません。

正当防衛は間近に危険が迫っていないと認められません。盗犯防止法は、
上記フィクションのような「勘違い殺人」まで正当と認めていますが、
間近に危険が迫っていると思いこんでいる必要があります。
「いつでも殺したい」を法律は許していません。また、料理をする等正当
な理由無く、包丁を持ち歩くと不法所持です。護身用とかはだめです。
警察に見つかれば捕まります。

友樹君のケースでは、盗犯防止や盗品奪還と関係無く暴行を受けているので、
盗犯防止法は適用されません。
このメールは以前お送りしたものと重複する部分があります。

ペンネーム:NOL